未来を切り拓く再生医療と緑内障
更新日:2024年6月4日
緑内障は、視神経を徐々に損傷させる疾患であり、放置すると視野が狭くなったり、最悪の場合、失明に至ります。世界保健機関(WHO)によると、緑内障は世界で最も一般的な失明の原因の一つのようで、日本人も、40代以上の5%が緑内障であるという推計があります。視野の一部がぼやけたりしているはずなのに、脳が補完することで、ぼやけたりせずに見えるため、最初は自覚症状がなく進行していってしまいます。定期的な検診が重要だと認識させられます。
そして、実は、明確な原因はわかっていないようで、ストレス、コンタクトレンズの不適切な使用、薬の副作用、睡眠時無呼吸症候群・・・など、様々な原因があげられていますが、その多くが眼圧の異常によって、視神経にダメージが加わることで視野が狭くなったり、視力の低下に繋がっていきます。
これまでの緑内障の治療は、主に眼圧を下げることに焦点を当てており、点眼薬、レーザー治療、外科手術などが一般的に用いられてきました。しかし、これらの治療法では、視神経の損傷を修復することはできず、既に失われた視機能を回復させることは困難でした。
視力の低下によって、車などの運転もできなくなりますし、日常生活にも大きな支障をきたすことに繋がってしまいます。
そこで、それらを解決するために、再生医療を用いた緑内障に関する研究が進められています。緑内障治療における再生医療の応用は、特に視神経の損傷を修復し、視機能を回復させることに大きな期待が寄せられています。
視力の回復によって、日常生活が送りやすくなるだけでなく、外出する機会も増え、様々なメリットにも繋がってきます。
視神経の再生には、主に幹細胞が活用されています。幹細胞は、自己複製能と他の細胞への分化能を持ち、これを活用することで、損傷した視神経を再生することが期待されています。研究者たちは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)をはじめとする様々な種類の幹細胞を用いた実験を行っており、すでに一部では動物実験において視神経の再生に成功した例も報告されています。
さらに、視神経再生を促進するためのアプローチも進んでいます。これは、神経に有効な成長因子や特定のシグナル伝達経路を調節する化合物を用いるものです。これらの方法は、視神経細胞の生存率を高め、再生を促進することで、視機能の回復に寄与する可能性があります。
その他にも、加齢黄斑変性など眼に関する再生医療の研究も進められています。やはり、視力というのは、QOLにおいて非常に重要だと思われますので、これらの研究が進んでいくことが期待されています。
しかし、再生医療による緑内障治療はまだ研究段階にあり、臨床応用には多くの課題が存在します。例えば、幹細胞の安全性と効果性を確認するためには、長期間にわたる臨床試験が必要です。また、治療法を個々の患者さまに適応させるためには、疾患の進行度や患者さまの健康状態を詳細に評価する必要があります。
それにもかかわらず、再生医療による緑内障治療の研究は、失明を防ぎ、多くの人々の視機能を改善するための新たな治療法に繋がるとして、大きな希望が持たれており、今後も技術の進歩とともに、この分野でのさらなるブレークスルーが期待されています。
基礎研究や臨床研究に携わる方々や多くの医療従事者の方々が、様々な疾病に対して、その治癒や改善のために、懸命に取り組んでいます。
再生医療は、緑内障だけでなく、多くの難治性疾患に対しても新たな治療法をもたらす可能性を秘めており、その発展がこれからも続き、皆さまの未来がより明るい方向に進んでいくことを願っております。また、私たちのサイトが、患者さまのQOL向上に、少しでも貢献できていれば幸いです。