• 不妊症に対する自家月経血由来幹細胞の卵巣注入

    投稿日:2023年8月9日
    更新日:2024年11月4日
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    月経血幹細胞とは?驚きの再生医療の可能性

    生理の血、これを医学用語では『月経血』と呼びます。

    皆さまは月経血にどのようなイメージを持たれていますか?

    例えば、『妊娠や出産に必要なもの』『面倒なもの』『わずらわしいもの』『ないと心配なもの』『女性を自覚するもの』いろいろなイメージを持たれていると思います。

    では、『汚い』『汚らわしい』といったマイナスイメージはありますか?

    最近では、フェムテックという言葉に代表されるようにポジティブに『月経』というイメージをとらえるようになってきたかと思います。

    私自身でいえば、昔から『大切なものが入っていそう』というイメージを持っていました。

    月経血幹細胞が私たちの体に与える驚くべき効果とは?

    現在では、この月経血の中には、私たちの体を健康的に維持するために大切な働きをする幹細胞が豊富に含まれていることが分かっています。

    この幹細胞を、月経血幹細胞と呼びます。紡錘形、解かりやすく書くと手を伸ばしたような形をしています。

    幹細胞は、様々な成長因子等を分泌して、からだの再生や修復を行ってくれています。

    皆さまご存じの代表的な幹細胞としては、山中教授のiPS細胞が有名ですね。これは、私たちの体の中にはなく、人工的に作成された幹細胞です。

    では、『再生医療サーチ』の中で、皆さまが探される幹細胞はどんなものなのでしょうか?

    それは、私たちの体の中に存在している『間葉系幹細胞』です。間葉系幹細胞は、私たちの体の様々な場所で働いてくれています。

    多くの研究で、間葉系幹細胞の効果は、どこから採取したかによって変わることが分かってきています。これを『○○由来幹細胞』と呼びます。

    その中でも近年注目されているのが、女性の月経血から取れる月経血幹細胞です。この細胞は、痛みを伴わずに取ることができ、早く増え、安定していて、体が拒絶反応を示さないという特徴があります。他の細胞と違って、長い間、性質が変わらずに増やすことができることも知られています。

    では、月経血細胞がどんな風に私たちの体の改善に役立つのかを一緒にみてみましょう。

    月経血幹細胞治療で不妊症改善へ:期待される効果

    日本では、2020年8月に日本で初めて月経血幹細胞を用いた再生医療計画番号が受理されました。これが私たちの神宮外苑WomanLifeClinicです。

    再生医療計画番号が発行されて行う治療が、日本では『再生医療』と呼ばれています。

    海外臨床試験で示された月経血幹細胞治療の成功率

    海外での月経血幹細胞治療における世界的第一人者であるCharlie Xiang教授との交流やハワイ大学医学部アトピーケア研究所の室長もご兼任されている松山夕稀己博士のご指導を得て、現在では月経血幹細胞を使った複数の治療を行っています。

    当院でお受け頂ける月経血幹細胞治療は、大きく分けると、静脈投与、卵巣への注入、子宮腔内への投与 この3つです。これらはいずれの治療も、最近よく目にすることの多い月経カップを使って、体に傷をつけず痛みを伴わずに細胞を採取することが出来ます。

    個人的には、老化の気になる女性にとっては嬉しい全身作用の側面を持っている『卵巣機能低下に対する自家月経血由来幹細胞の静脈投与』についてご説明したいところですが、今回はご要望の多い『不妊症に対する自家月経血由来幹細胞の卵巣注入』についてご説明したいと思います。自家とは『自分の』という意味です。

    初めに、感染症などの検査をお受け頂いた後、月経カップを使って月経血の採取を行います。また、院内で不妊治療の専門医による診察もお受け頂きます。

    皆さまの細胞は、院内に併設された細胞培養施設で約4-6週間かけて丁寧に培養していきます。

    治療の効果ですが、この治療については、すでに海外ではいくつかの臨床試験も行われていて優秀な治療成績を出しています。例えば、Simin Zafardoustらの2020年の報告では、卵巣反応不良(Poor Ovarian Response)の女性に対して顕微授精(ICSI)が行われたグループでは16人中2名が妊娠したのに対して、自家月経血幹細胞の卵巣注入が行われたグループでは15人中7名が妊娠しています。また、この報告によると月経血幹細胞を注入した女性では、注入の前周期と比較すると、卵胞数と卵子数が統計学的に有意に増加したことも示されています。この成功率は、その他の幹細胞投与の報告の成功率よりも高く、月経血幹細胞の卵巣注入は今後ますます期待される治療ともいえます。

    当院では、2023年7月よりこの治療の提供が開始され、皆さまがこの記事を目にして頂く時期には実際に卵巣注入された患者さまの経過観察がすでに始まっている頃かと思います。

    日進月歩の再生医療の世界の中、私たちの提供する月経幹細胞治療を通じて皆さまの悩みや望みが叶えられる世界になっていくことを私も期待しています。

    当院でお受け頂ける月経血幹細胞治療

    【卵巣機能低下に対する自家月経血由来幹細胞の静脈投与】 計画番号PB3200082
    【不妊症に対する自家月経血由来幹細胞の卵巣注入】    計画番号PB3230068
    【不妊症に対する自家月経血由来幹細胞の子宮腔内投与】  計画番号PB3230069

    ※治療に際して、『再生医療等の安全性の確保等に関する法律 (平成26年11月25日施行)』を遵守して、細胞投与を行います。

    施設の特徴

    • 日本再生医療学会の認定する上級臨床培養士と再生医療認定医によって細胞治療を提供します。
    • 再生医療等安全性確保法に基づいた厚生労働省届出済みの細胞培養加工施設を併設しております。
    • 治療計画、治療効果、治療のリスクなどの丁寧なインフォームドコンセントのもとに、患者様にご納得して治療を受けて頂ける診療スタイルを大切にしています。
    • 治療をお受けいただいた後のアフターフォローの診察を院内徹底しております。

    患者様に向けての声

    日本では、幹細胞の卵巣注入が受けられるクリニックはまだ非常に少ない状況です。当院では、2023年7月時点で唯一、月経血幹細胞の卵巣注入を実施しています。新しい選択肢として再生医療にご興味のある方は、ぜひ当クリニックまでご相談ください。