• PRPを用いた不妊治療の目的と効果・副作用

    投稿日:2024年4月29日
    更新日:2024年4月30日
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    妊娠における受精卵の着床率には子宮内膜の厚みとの相関性が指摘されており、子宮内膜が薄い状態(特に7ミリ未満)では着床が難しいことが知られています。そんな中、不妊治療と卵子凍結保存の分野で注目を集めているのが、多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)の使用です。

    この治療法は、患者様自身の血液から高濃度の血小板を抽出し、それを子宮内に注入することによって子宮内膜を活性化させ、受精卵の着床を促進することを目的としています。血小板には細胞の成長を促す物質や免疫に関わる物質が含まれているため、PRP療法は子宮内膜の質を改善し、不妊治療における成功率を高める可能性があると期待されています。

    多血小板血漿(PRP)の基本知識

    PRPは、患者様の血液を特殊な遠心分離器で処理し、血小板を濃縮して得られる血漿です。この血漿には、PDGF(血小板由来成長因子)、TGF-β(形質転換成長因子)、VEGF(血管内皮成長因子)、FGF(線維芽細胞増殖因子)などの成長因子が豊富に含まれており、これらは細胞の修復、成長、血管新生を促進する効果があります。この特性を活用することで、PRPは不妊治療において子宮内膜の環境を改善し、子宮内膜の厚みを回復させ、着床能を高めることで、妊娠成功率の向上に貢献すると考えられています。

    PRPの対象となるのは、過去に子宮の手術を受けた影響等で子宮内膜が薄く着床が難しい場合や、良好な受精卵を移植してもなかなか着床しない場合(反復着床不全)などです。

    PRPを用いた不妊治療の目的と期待される効果

    PRP治療の主な目的は、子宮内膜を厚くし、より受精卵が着床しやすい環境を作ることにあります。PRPに含まれる成長因子が子宮内膜の質を改善することで、受精卵の着床率が改善されると考えられています。具体的な治療プロセスは、患者様ご自身の血液を採取し、それを遠心分離することでPRPを抽出後、子宮内に直接注入します。

    一般にPRPは子宮内膜が薄くなり妊娠が難しくなった患者様に対して、子宮内膜の厚みを回復させ、妊娠率の向上をもたらすことが期待されていますが、子宮内膜の厚みが回復しない場合でも妊娠率が向上する事例も報告されており、PRPによる着床環境の改善効果も注目されています。

    しかしながら、PRP治療が全ての方に効果があるわけではなく胚移植まで至らないケースも存在します。また、不妊治療の成否は多くの要因に左右されるため、PRP治療だけでその成否を判断することはできません。PRPを含むあらゆる治療法を検討する際には、個人の健康状態や不妊の原因を十分に考慮することが重要です。

    治療を受ける上での注意点と副作用

    PRP治療は、患者様自身の血液を使用するため免疫反応による副作用のリスクは極めて低いとされています。しかしながら、採血に伴う軽度の痛みや出血、または注入部位の感染などのリスクが存在するため、治療前には医師とリスクについて十分に話し合い、PRPによる注意点、副作用について十分に理解することが重要です。

    多血小板血漿(PRP)を用いた不妊治療は、子宮内膜の質を改善し、受精卵の着床を促進することで、不妊治療の成功率を向上させると考えられています。操レディスホスピタルではPRP治療以外にも、多くの先進医療を採用しています。それら全てを利用して、生殖医療専門医資格を持つ医師が一人一人の状態に合った治療プランを立てています。ご希望やご心配等あれば、ご気軽に相談ください。このコラムが、不妊治療に関心を持たれた患者様にとって、有益な情報源となれば幸いです。