超音波ガイド下PRP療法
更新日:2024年11月5日
PRP (Platelet Rich Plasma 多血小板血漿)療法の普及と注目
PRP (Platelet Rich Plasma 多血小板血漿)療法は、2014年に再生医療等安全性確保法が施行されて以来、様々な運動器疾患に対する治療法として普及してきました。最近では野球選手の肘の障害に対する治療法として、多くの有名選手がPRP療法を行っていることがメディアに取り上げられ注目されました。
変形性関節症に対するPRP療法の期待
また変形性関節症に対しても一定の効果があることが報告されています。リハビリテーションやヒアルロン酸注射などの保存的治療では痛みは改善しないが、手術など外科的治療はしたくない、といった際の新しい治療の選択肢として期待されています。
PRP療法の仕組み
PRPとは患者様の血液を遠心分離して得られる濃縮された血小板を含む血漿です。血小板には傷ついた組織を修復し、炎症を抑える力を持つ成長因子が多く含まれています。それを患部に投与することで治療効果が得られますが、どの疾患に対しどれくらいの効果があるかはまだはっきりと分かっておらず、これからの研究課題といえます。
当院でのPRP療法の実績
当院整形外科では2020年12月からPRP外来を開始し、2022年9月までに約300件の治療をさせて頂いております。その約65%が変形性膝関節症の患者様です。一般的には変形性膝関節症が進行している状態よりも、初期の段階の方が治療効果があると言われておりますが、様々な工夫をすることでその効果を高めることができると考えています。
超音波診断装置をガイドにしたPRP投与の利点
そのひとつが超音波診断装置を使用することです。これをガイドとして注射することで患部に正確にPRPを投与することができます。
また、変形性膝関節症に対しては、関節内に確実にPRPを投与することが重要です。変形性膝関節症の患者様は関節液が溜まっていることが多く、超音波をお皿の上にあてると関節液を確認することができます。関節液は採取しますが、少し関節液を残した状態でそこにPRPを投与することでしっかりと関節内にPRPが行き渡ります。
また、膝の痛みは関節内だけとは限りません。変形性膝関節症の患者様は内側の痛みを訴えることが多いのですが、そこには滑液包という炎症が起こりやすい部位があります。内側に限局的な圧痛があり、MRIや超音波で炎症が起きていることが確認されたときには、上述した関節内注射に加えて、膝の内側に直接、超音波ガイド下でPRPを注射します。そうすることで劇的に治療効果が上がることがあります。
他の関節や筋腱への応用
肩関節や股関節などの他の関節や、肩腱板、アキレス腱などの筋腱の損傷に対しても超音波ガイド下でPRPを投与しています。身体所見やMRI、超音波などの画像所見から痛みの部位を的確に診断し、正確にPRPを投与することで治療効果を高めることができます。PRPの種類は数多く、疾患に対してどのPRPを選択するか、投与方法や投与回数など、いまだに治療法は検討する余地があり、その分これからさらに発展する可能性のある治療法といえます。