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    PRP子宮内投与による不妊治療
    投稿日:2022年4月7日
    更新日:2022年5月2日

    PRPって何?

    PRP(Platelet Rich Plasma)は、Platelet=血小板をRich=豊富に含んだPlasma=血漿、という意味で、多血小板血漿と呼ばれます。血液は、その45%は赤血球・白血球・血小板の細胞(血球)成分から、55%は血漿と呼ばれる液体成分から成ります。血液から赤血球と白血球を除き、血小板のみ含有した血漿を、さらに濃縮したものがPRPです。

    血小板の主な働きは、出血時の止血作用ですが、血小板内にはさまざまな成長因子と呼ばれる成分が多く含まれており、これらは血管新生や細胞の増殖・分化・移動を促進して、組織の修復・再生を助けて創傷治癒を促す働きがあります。

    PRP治療は、この血小板成長因子の作用を利用した再生医療で、自分の血液から多血小板血漿を作製して、目的とした部位へ投与します。当初は、整形外科・スポーツ医学領域で始められましたが、現在では多種多様な分野で応用されています。不妊症では、難治性不妊に対してPRP治療が行われています。

    PRPの作製

    難治性不妊へのPRP治療

    体外受精を行ってもなかなか妊娠しない難治性の不妊として、

    1. 子宮内膜菲薄例(受精卵が着床・妊娠するのに必要な7mm以上の子宮内膜厚にならないヒト)
    2. 反復着床障害例(妊娠の可能性の高い良好胚を複数回移植しても着床・妊娠しないヒト)

    にPRPを子宮内に投与し、内膜厚の増加と着床・妊娠を図ります。

    PRP治療の実際

    当院は、産婦人科PRP研究会(https://ogprp.org)に所属し、2019年9月より難治性不妊に対するPRP子宮内投与を、主にホルモン補充周期下での凍結融解胚移植で施行しています。

     PRP投与は、内膜調整中の黄体ホルモン切替え前の月経8~10日目と、その48〜72時間後の月経10〜12日目の2回行います。治療日に来院していただき採血20mLからPRP 1mLを作製後(図1)すぐに、外来診察室の内診台で経腟超音波下に胚移植用カテーテルを用いて子宮内に注入(図2)して終了です(約1時間)。

    産婦人科PRP研究会のPRP治療は、治療当日に作製する血小板成長因子がfreshかつrichなPRPを用いるため、高い治療効果が期待されます。現在は自費診療であり、費用(税込)は投与1回目が16.5万円、2回目が5.5万円で、2回投与が原則ですが1回投与でも効果があるとされています。

    PRP治療は“再生医療”であり、法律に基づいて申請と認可、厚労省への届出と報告が必要で、実施できる施設は限られています。当院に通院している方だけではなく、他院からの依頼(PRPのみ当院で施行し、移植は他院で施行)も多くあります。

    PRP子宮内注入

    PRP子宮内投与による不妊治療の当院での成績

    2021年12月までに、54人に対して77回(他院からの依頼12人16回)のPRP治療-移植を行っています。このうち結果の判明している41人(他院からの依頼では、その後連絡がなく経過不明例あり)で、子宮内膜菲薄例26人(移植41回)のうち14人(54%)が着床(妊娠反応:陽性)し、妊娠(臨床的妊娠:胎嚢確認)は10人(39%)でした。

    PRP治療後の内膜厚は平均7.4mm(3.5〜11.0mm)でしたが、妊娠10人中4人(40%)、着床15回中7回(47%)は内膜厚<7mmで、PRPは内膜が厚くならなくても着床・妊娠を改善する効果がありそうです。開始当初は内膜が≧7mmにならないときは移植を中止していましたが、現在では内膜の厚さに関係なくPRP治療周期は移植を行っています。

    一方、反復着床障害15人(移植16回)では6人(40%)が着床し、4人(27%)の妊娠を得ています。またPRP施行後2周期以内の妊娠が2人あり、これを含めると6人(40%)の妊娠となり、PRPの効果は施行後1〜2周期は続いている可能性があります。

    ただし反復着床障害例では、PRP治療をいきなり行うのではなく、まずは慢性子宮内膜炎、血栓性素因や免疫、着床の窓などの着床不全の原因を検査し治療した後に行うべきものと考え、当院でもそうしています。

    PRPは夢の治療でも万能の治療でもありません。妊娠率は100%ではなく、着床はしても臨床的妊娠に至らないこともありますし、妊娠後の流産もあります。しかし、子宮内膜菲薄例でも反復着床障害例でも、これまでなかなか着床・妊娠しなかった症例で40%近い妊娠が得られていることに、治療する側としても大変驚いています。

    内膜が薄くてお悩みの方、いろいろ検査・治療しても着床が得られない方は是非試していただきたい治療です。

    コラムの監修者

    医療法人社団杉一会 杉山産婦人科 新宿
    髙見澤 聡

    杉山産婦人科新宿 副院長
    産婦人科専門医・指導医、生殖医療専門医
    日本生殖心理学会副理事長、日本IVF学会常任理事、日本受精着床学会評議員・幹事、日本生殖免疫学会評議員