• PRP(多血小板血漿)治療とは?どんな病気やケガが治せる?

    投稿日:2022年5月23日
    更新日:2024年9月2日
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    PRP(多血小板血漿)治療とは?

    もともと人を含む動物には、キズを治す・損傷した組織を修復する仕組みが備わっており、この仕組みを利用し・応用したものがPRP治療です。

    切り傷など、組織が損傷すると血管が切れ出血しますが、血小板と呼ばれる血液中の物質が、出血部に自然に集まり止血します。

    その後、血小板の中から、組織を修復する命令・指令を細胞に伝える役目を持ったサイトカインやケモカインと呼ばれる物質が何百種類も放出され、キズのところや周りにいる細胞の受容体に結合します。

    命令・指令を受け取った細胞は、修復に必要な蛋白質などの分子を合成・産生して、組織の修復を開始し、時間経過とともに徐々にキズが修復されます(図1)。

    血管損傷部に血小板が集まり止血
    図1

    PRPは、赤血球を除いた血液を濃縮してつくられた血小板濃度の高い血漿であり、損傷した組織を生理的な自然な仕組みを利用し修復します。言い方をかえると、総合サイトカイン療法ともいえます。

    PRP治療はどんな病気やケガが治せる?

    どのような病気やケガの治療に利用されるかといいますと、いわゆるテニス肘やゴルフ肘と呼ばれる肘関節の内側・外側上顆炎(図2)や、マラソン選手に多いアキレス腱症(図3)、スポーツ選手にみられる膝蓋腱症など、使い過ぎで発症する腱付着部症と呼ばれる疾患です。

    PRP治療前後の膝関節MRI①
    図2
    PRP治療前後の膝関節MRI②
    図3

    また、スポーツ界においてよく“古キズ”と呼ばれる、陳旧性の筋肉・腱・靱帯のケガなども対象になります(図4)。最近では、年をとって関節の軟骨が摩耗する変形性関節症などにも応用されます。

    これらの病気やケガでは、キズを治すための修復反応が、通常と比較し、かなりゆっくりになっているため、なかなか治らない、難治性の状態になっております。

    これを治療するには、通常の修復反応を開始させなければなりませんので、これができるPRPを患部に注射し修復を図ります。

    PRP治療前後の膝関節MRI③
    図4

    これまでは、ステロイドの注射など、一過性に症状を軽減する対症療法しかなく、完治せず再発することがありましたが、生理的で理にかなったPRP治療の登場により、治すことができるようになりました。

    ただし、何でも治せるというわけではなく、発症からの経過期間が長く、病態が悪化し瘢痕組織の量が多く、線維化が顕著な腱付着部症や進行した変形性関節症、腱や靱帯が完全に切れている病態は、PRP治療では治せません。

    病気やケガが起こってから、なるべく早い時期にPRP治療を受けられた方が治りやすいので、ご注意して頂ければ幸いです。

    最後に、このコラムが、皆様のご理解や治療のお助けとなることをお祈り申し上げます。