• PRP(多血小板血漿)治療とは?どんな病気やケガが治せる?

    投稿日:2022年5月23日
    更新日:2023年11月2日
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    PRP(多血小板血漿)治療とは?

    もともと人を含む動物には、キズを治す、損傷した組織を修復する仕組みが備わっており、この仕組みを利用・応用したものがPRP治療です。

    切り傷など、組織が損傷すると血管が切れ出血しますが、血小板と呼ばれる血液中の物質が、出血部に自然に集まり止血します。

    その後、血小板の中から、組織を修復する命令・指令を細胞に伝える役目を持った、サイトカインやケモカインと呼ばれる物質が何百種類も放出され、キズのところや周りにいる細胞の受容体に結合します。

    命令・指令を受け取った細胞は、修復に必要な蛋白質などの分子を合成・産生して、組織の修復を開始し、時間経過と伴に徐々にキズが修復されます(図1)。

    血管損傷部に血小板が集まり止血
    図1

    PRPは、赤血球を除いた血液を濃縮してつくられた、血小板濃度の高い血漿であり、損傷した組織を、生理的な自然な仕組みを利用し修復します。言い方をかえると、総合サイトカイン療法ともいえます。

    PRP治療はどんな病気やケガが治せる?

    どのような病気やケガの治療に利用されるかといいますと、いわゆるテニス肘やゴルフ肘と呼ばれる肘関節の内側・外側上顆炎(図2)や、マラソン選手に多いアキレス腱症(図3)、スポーツ選手にみられる膝蓋腱症など、使い過ぎで発症する腱付着部症と呼ばれる疾患です。

    PRP治療前後の膝関節MRI①
    図2
    PRP治療前後の膝関節MRI②
    図3

    また、スポーツ界において、よく“古キズ”と呼ばれる、陳旧性の筋肉・腱・靱帯のケガなども対象になります(図4)。最近では、年をとって関節の軟骨が摩耗する、変形性関節症などにも応用されます。

    これらの病気やケガでは、キズを治すための修復反応が、通常と比較し、かなりゆっくりになっているため、なかなか治らない、難治性の状態になっております。

    これを治療するには、通常の修復反応を開始させなければなりませんので、これができるPRPを患部に注射し修復を図ります。

    PRP治療前後の膝関節MRI③
    図4

    これまでは、ステロイドの注射など、一過性に症状を軽減する対症療法しかなく、完治せず再発することがありましたが、生理的で理にかなったPRP治療の登場により、治すことができるようになりました。

    ただし、何でも治せるというわけではなく、発症からの経過期間が長く、病態が悪化し瘢痕組織の量が多く線維化が顕著な腱付着部症や、進行した変形性関節症、腱・靱帯が完全に切れている病態は、PRP治療では治せません。

    病気やケガが起こってから、なるべく早い時期にPRP治療を受けられた方が治りやすいので、ご注意して頂ければ幸いです。

    最後に、このコラムが、皆様の御理解や治療のお助けとなることをお祈り申し上げます。