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    変形性膝関節症に対する血小板を使った再生医療とは
    投稿日:2022年11月14日
    更新日:2022年11月14日

    変形性膝関節症におけるAPS療法

    変形性膝関節症とは、関節の軟骨がすり減り、痛みや腫れが生じます。

    今までは、鎮痛薬の内服、ヒアルロン酸の注射、リハビリテーションなどの保存療法を行い最終的には人工膝関節置換術などの手術が一般的な治療方法でしたが、近年、保存療法に新たな選択肢として再生医療が可能になりました。

    再生医療とは、人間のもっている自然治癒力を最大限に高めて、治療に活かす方法です。膝関節に対する再生医療には、血小板を使う方法(PRP療法)とお腹の脂肪を採取する方法(幹細胞療法)があり、血小板を使うPRP療法は、キズも出来ず、日帰りで行えるのが長所です。

    血小板は、血液に含まれる細胞のひとつで、ケガをして出血したところに集まって傷口をふさぎ、出血を止める作用があります。出血を止めるときには、組織の修復を行うはたらきをする成長因子という物質を血小板が放出します。PRP療法(多血小板療法)とは、この血小板の成長因子を活用する治療です。

    PRP療法も新たな手法が開発され、より有効な成分を濃縮したものがAPS療法になります。APS療法は、次世代のPRP療法と言われる治療です。

    PRPには炎症を引き起こす成分と抑える成分が混じっています。PRPからもう一手間かけて炎症を抑える成分のサイトカインを取り出したものがAPS(自己タンパク質溶液)です。

    膝が腫れる、熱を持つ、水が溜まるなどの関節の炎症を抑える効果が期待できます。

    飲み薬、ヒアルロン酸の注射などの治療を行っても効果が不十分な方、APS療法をご検討ください。変形が軽度から中等度(変形のグレード2~3)の方にお勧めします。変形が強い(変形のグレード4)と効果が薄れるため、手術の方が適しています。

    再生医療の治療の流れ

    再生医療は、「再生医療などの安全性の確保に関する法律」を遵守して行われます。厚生労働省から認定された「特定認定再生医療等委員会」または「認定再生医療等委員会」で審査を受け、再生医療の治療計画を厚生労働省大臣に提出して治療を行うことができます。

    医療機関で、まず診察を受けていただき、膝の状態(痛み、腫れなど)や、レントゲンで軟骨のすり減っている程度(変形性膝関節症のグレード)を確認します。必要であればMRIで軟骨や半月板、骨の状態を確認し今の症状が変形性膝関節症によるものかどうかを判断します。

    APS療法は、自分の血液を採って、濃縮して自分に返す治療なので、副作用は極めてまれであると考えられます。

    APS治療を行う日時を調整します。ロキソプロフェンやジクロフェナクなどの痛み止めは血小板の作用を弱める可能性がありますので、注射する1週間前から中止します。痛み止めが必要な場合はアセトアミノフェンで代用します。

    治療当日は指定された時刻に来院していただき、体調の確認、書類の確認を行います。

    採血を約60ml行ったあと、APS液ができあがるまで約1時間かかります。その間は、食事をとっても問題ありません。

    採血時にできあがる時間がわかりますので、その時刻に外来に戻っていただきます。

    処置室のベッドに横になっていただき、まずは消毒をして関節液が溜まっていれば、関節液を抜き、そのあとにAPS液を注入します。

    注射の後約6割の方に、違和感、腫れ、痛みがでることがあります。日常生活は通常通りで構いませんが、運動は1、2日間控えた方がよいでしょう。

    その後、注射した1週間後に腫れなどがでていないか確認し、その後リハビリを開始します。

    リハビリは通常3か月間行います。注射の後1か月、3か月、6か月、9か月、1年、1年半、2年と定期的に診察を受けていただき、診察とアンケートにご回答いただきます。

    APS療法で期待される効果

    APS療法は、ヒアルロン酸注射よりも6か月から1年経過時点での痛みをとる効果が良いことが報告されています。APS療法は全体では5割から6割の方に効果があります。変形が中等度の方で6割程度ですが、変形が高度になると4割程度になります。効果が弱まってきたときに再度APS療法を行うことは可能です。APS液の炎症を抑える働きが影響していると考えられます。残念ながら、軟骨の量が増えることはMRIでも証明されていません。

    APS療法は、変形が中等度(グレード2から3)の方にお勧めします。5割から6割の方に効果が見られます。ご自身の血小板に含まれるサイトカインという炎症を抑える物質の量に個人差があるため、とても喜んでもらえる場合と、期待通りの結果が得られない場合もあるのが、課題になります。

    炎症を抑える作用が中心となるため、熱感、腫れによる痛みをとる効果が期待できますが、減った軟骨を戻す作用はないため、変形が高度な方で痛みの症状がある場合には、手術をお勧めします。

    皆様のQOLを高める最適な選択の一助になればと思います。

    コラムの監修者

    運動器ケア しまだ病院
    佐竹 信爾