• 多様な変形性膝関節症に対する再生医療という選択

    投稿日:2022年12月20日
    更新日:2023年11月2日
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    変形性膝関節症の現状

    変形性膝関節症の患者数は2000万人とも3000万人とも言われており、人類にとって最も多く罹患する疾患の一つです。その実態は、関節表面を覆っている軟骨が、徐々に劣化して、やがては擦り切れてなくなってきます。それに伴って、痛み、変形(O脚やX脚)、歩行障害が生じ、やがては日常生活も制限されるようになります。

    一口に変形性膝関節症と言ってもその程度は様々です。ごく初期の方から重度に骨の変形が見られる方までおられます。

    それだけに、それに対する治療法も様々です。運動療法、薬物療法、注射療法、手術療法などです。しかしながら、残念ながら病変部分を確実に治す方法は人工関節手術以外にありません。そのほかの治療の目的は、変形はそのままにして痛みを軽減させ、歩行などの機能を向上させることにあります。症状の軽減=変形・病変の治癒でないことに注意が必要です。

    変形性膝関節症の人工関節手術

    人工関節とは、傷んだ関節の表面を削り、代わりに金属やプラスチックで表面を覆うものです。疼痛の除去や機能回復の確実性は格段に高くなりますが、手術侵襲(体に与える直接的・関節的な影響)が大きくなり、頻度は低いものの細菌感染や人工関節部品の不具合などの合併症を生じる可能性もあります。

    私は、これまで変形性膝関節症に対する人工関節手術を4000例以上に行ってきました。少しでも侵襲を軽減させるために、手術方法に筋肉を切らずに手術する方法を工夫したり、軟骨の変形した部分だけ人工関節にする、部分人工膝関節をイギリス留学で学び、積極的に取り入れてきたししてきました。

    しかしながら、人工関節が適応になる人は、病状がかなり進んだ一部の方に限定されます。また、人工関節に適した方でも、どうしても手術を受けたくない、または身体的な問題のために手術を受けることができない方が多数おられます。人工関節を行わない治療(関節をそのまま保存するので保存療法と呼びます)と人工関節治療には大きな溝があったのです。

    変形性膝関節症への再生医療

    各種の再生医療はこの隙間を埋める役割があると考えています。

    そのひとつに、間葉系幹細胞を用いた治療(MSC療法)があります。

    間葉系幹細胞(MSC)とは体内に存在する幹細胞のひとつで、骨や軟骨、血管、心筋細胞などに分化できる能力をもつ細胞のことをいい、脂肪などから採取することが可能です。
    当院では、腹部や下肢から脂肪を採取して、それを即日投与する脂肪組織由来幹細胞治療(ADRC治療)を行なっています。その成果を見るために、一部症例で関節鏡という内視鏡を用いて投与後1年で確認しています。その結果、完全な再生が得られたり、完全でないまでも軟骨が欠損した部分の周辺から再生軟骨が確認できたりしています。また、半月板の再生も可能であることも確認しています。このような成果は国際雑誌にて発表しています。

    変形性膝関節症への再生医療

    一方、再生医療は従来の人工関節にとって変わるものではありません。やはりある程度進行した変形性関節症には人工関節の方が、痛みの軽減と機能の向上の確実性は高いです。他方、再生医療は病巣部の完全な修復は1~2日で完了し入院が不要で、膝に対してほとんど傷害を加えません。自費診療となるため、手軽にというわけにはいきませんが、将来的に少ない費用で施行できるとなると、一旦再生医療を行って無効であれば人工関節を行うということも可能であるかもしれません。

    変形性膝関節症の治療には、従来の保存療法、人工関節に代表される手術療法、そしてその中間となる再生医療と多くの選択肢ができました。どの治療法が優れているというものではなく、それぞれの治療には長所短所があります。患者様には、まずご自身の膝の状態はどの程度であるかをしっかりと診断していただき、その上で各治療の特徴をよくご理解いただいた上で最適な治療を選択していただければと願っています。

    そのため、当院ではYoutubeチャンネルを開設して、積極的に情報を発信しています。また、病院ホームページからは無料相談も受け付けていますので、お役立ていただければ幸いです。

    今後とも、より良い治療を目指して努力したいと思います。
    膝の傷みに関するご相談は高槻病院まで。

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