自己血由来成分CGFを利用した口腔内組織の再生医療
更新日:2023年3月20日
抜歯をしたり、歯周病の進行により、歯ぐきの骨ボリュームが減少します。インプラントや義歯を安定させるには骨のボリュームが必要になるので減った部位には骨を移植します。
抜歯による変化
移植骨は他の部位から採取した自家骨や人工骨、感染物質を除去した動物の骨を使います。
移植骨は直後には免疫細胞がありません。移植骨の中に血管が新生されて自分の骨と変わらなくなるまでは数ヶ月かかります。それまでは細菌に対する免疫系も未熟です。口腔内には約700種類の細菌がいて、歯をよく磨く人でも1000億個以上ほとんど磨かない人では1兆個もの細菌が住み着いています。
移植手術した部位が裂けて破れてしまうと移植骨に細菌が到達してしまいます。早期に移植骨へ細菌が付くと免疫系が細菌に負けて(感染して)移植が失敗します。感染率を下げるためには移植骨をカバーする為に膜を置きバリアします。膜があることにより移植骨に感染が起こりにくくなります。
この膜も細菌を通過させない物、年月が経つと自然に溶けて無くなる物など色々な種類があります。
移植骨には種類があります。自家骨は免疫拒絶反応が無く、骨が生体に一番なじみやすいのは自家骨と言われています。欠点は移植骨を健康な他の部分から採取することです。
人工骨は炭酸カルシウムやβ-TCP、アパタイトなど人工合成した骨です。例サイトランスグラニュール等
異種骨は動物骨の有機物成分を除去した骨です。以前世間を騒がせた狂牛病はプリオンに感染した牛を食べることにより発症する病気です。ましてや感染物質が含まれた骨を移植すると危険なので、骨を科学的に処理した骨を使用します。国内で販売されている骨は厚生省が認可している材料です。
例バイオオス、ボーンジェクト等
その他にもヒトの骨を科学的に処理した他科骨などがあります。例脱灰凍結乾燥骨等
利点 | 欠点 | 骨再生 | |
---|---|---|---|
自家骨 | 自己組織なので生体親和性高い 成長因子を含み、骨再生が早い 免疫原性が無い。感染リスクが低い | 骨採取手術が必要 採取量に限界有り | 骨形成 骨誘導 骨伝導 |
人工骨 | 骨採取手術が不要 供給量の制限が無い 免疫原性が無い | 成長因子を含んでいない 材料代 自家骨より感染に弱い | 骨伝導 |
同種 他家骨 | 骨採取手術が不要 供給量の制限が無い | 成長因子を含んでいない 材料代 | 骨伝導 (骨誘導) |
異種骨 | 骨採取手術が不要 供給量の制限が無い | 成長因子を含んでいない 材料代 未知の病原の感染リスク(国内承認済み) | 骨伝導 |
CGF | 自家骨と同じ 自家骨や人工骨などと混ぜて使える 膜も作製可 | 採血が必要 骨移植が必要な場合が有る |
CGF( concentrated growth factor)
近年再生医療への血小板の使用が増加しています。成長因子を含む血小板は、細胞の移動、増殖、分化、血管新生において主要な役割を果たし、組織再生プロセスに関連しています。1997年に 多血小板血漿 (PRP) が論文に発表されました。
方法は患者さんから採血した血液を遠心分離機操作して血小板を濃縮した血漿を取り出し、移植する骨に混ぜて使用します。問題点はPRPの調製中に、ヒトや動物由来のトロンビンおよび抗凝固剤を添加することで、この技術は外因性の物質を使用し、免疫学的および感染性反応を引き起こす可能性があります。その問題点を改善したのがCGFです。
方法は患者さんから採血した血液を遠心分離機の回転数を調節操作して、添加物を加えずに濃厚血小板フィブリンゲルを分離します。その中にも成長因子 (GF)も含まれており、7日以上成長因子を放出します。形状はゼリー状で抜歯窩にそのまま挿入することも出来ます。移植骨と混ぜて使うことで移植骨の間への血管新生を促進します。また圧迫して潰せばシート状になり膜としても使えます。
抜歯後CGFと人工骨移植をした症例
まとめ
インプラント治療では骨が足りない場所にCGFを移植したり、膜状にして骨や移植骨をカバーして、治癒を促進、粘膜や骨の再生するのに使用します。CGFは添加物を入れずに、ご自身の血液のみで生成できるので、従来の骨移植で懸念されていたアレルギーや感染のリスクが軽減し、より安全で、お体への負担が少ない治療が期待できます。
【CGF再生療法で期待できること】
・成長因子が含まれているので、血管新生が早く傷の治りが早い。歯肉や骨の再生が促進され治癒期間が短縮できます。
・完全自己血液由来なのでアレルギーや感染のリスクを軽減します。
【CGF再生療法に適している方】
・顎の骨が少なくてインプラントができないと言われた方
・できるだけ短期間で、体への負担が少ない治療をされたい方
再生医療等安全性確保法の施行によりCGFを用いた治療をするには厚生省に届出と、毎年の更新が必要です。当院は毎年届出を更新して、安心安全を心がけています。