再生医療のメリット・デメリット
更新日:2024年6月5日
再生医療のメリットとは
再生医療を正しく広く普及させることを目的に、当サイトを運営していますが、今後大きな効果を期待できる部分もあれば、まだまだ課題が残されている部分もあります。今回は、これらに関してお話しできればと思います。
まず、メリットとして挙げられるのは、副作用や拒絶反応などの可能性が低いということです。患者さん自身の細胞や血液を活用することから、臓器移植などのように適性のあるドナーを探す必要もなく、拒絶反応も起きにくいです。
また、薬などのように、症状を抑えるような外的な物質を体内に入れるわけでもないので、アレルギーや副作用なども起きにくいです。ただし、幹細胞やNK細胞など、培養を必要とする治療の場合、培養するための環境や、培養の際に用いる培地(畑)、効率的に培養するための添加物(肥料)による可能性も含め、副作用の可能性はゼロではありません。
しかし、再生医療に用いる細胞の培養をする施設というのは、国から非常に厳格な基準を設けられており、培養の際の工程や、使用する培地や添加物など、全てにおいて細かく定められており、非常に安全性は高い環境となっています。
これらのことから、再生医療の副作用が起きる可能性は、低いと言われています。
次に、身体的な負担が少ない(低侵襲)であることが挙げられます。
再生医療は今まで改善や根治が難しいと言われていた疾病に対する効果が期待されていることもあり、非常に高度で複雑な治療行為を行なうような印象を抱かれがちですが、実は身体的な負担が非常に少ない治療内容です。
幹細胞治療などの際は、脂肪吸引や耳の後ろなどから米粒サイズの採取が必要なので、少しの侵襲性がありますが、日帰りすることができますし、PRPやNK細胞療法などは採血程度で、事前準備は完了です。そして、投与する際も、点滴や注射など針を刺す程度です。大きな手術や入院などの必要がなく、身体的な負担が少なく、改善や根治が難しいと言われている疾病に対する効果が期待できるのは、大きなメリットであると考えられます。また、手術などで傷痕が残ってしまう、というようなことも起きにくいです。
また、対症療法のように、痛みなどを投薬などで抑えていても、根本的な原因の改善はできておらず、薬が手放せない・・・というようなことではなく、再生医療は、病気や怪我などで失われた組織の再生を促し、根本的な原因の改善に繋げることによって、痛みなどの症状も改善していくことが期待されています。
再生医療のデメリットとは
このように、今まで対症療法でしか対処ができず、改善や根治が難しかった疾病に対して、再生医療は、身体的な負担が少ない方法で組織などの再生を促すことで、根本的な原因の改善が期待されていますが、デメリットがあることも知っておく必要があると思います。
まず、必ず効果が保証されているものではないということがあります。これは、他の治療にも当てはまることかと思いますが、再生医療の場合も、症状の度合いや、患者さんの状態や生活習慣によって、効果が出なかったり、持続しない場合があります。
採取した幹細胞や血液(血小板)などの状態によっては、期待値ほどの効果に繋がらない場合があります。
再生医療というのは、自身が本来持っていた機能を取り戻すというもので、どんなに治療を続けても、元の状態を超えることはないです。例えばですが、100m走るのが15秒だった人が、加齢などによって20秒になってしまった場合、また15秒で走れるようにはなりますが、10秒で走れるようにはなりません。
また、人間というのは、20代でも機能低下(老化)は進んでおり、加齢が進むにつれて、機能低下のスピードは加速度的に上がっていきます。また、生活習慣に起因する疾病も多くあります。去年は100mを20秒で走れたのに、30秒、50秒、80秒・・・と、どんどん遅くなるようなイメージです。
近年よく見聞きする、幹細胞培養上清液療法(エクソソーム療法)でも同じことが言われていますが、再生医療を受けたから治るということではなく、再生医療を受けながら、リハビリテーションや運動を行なうことや、健康で過ごせるように生活習慣を見直すことも重要だと言われています。
次に、費用面です。再生医療は、現在は自由診療として患者さんに提供されています。以前、再生医療の中からいくつかの治療に関しての料金相場について、コラムに載せましたが、高額な場合が多いです。
細胞を培養する施設の維持費、培養に関する原価、人件費などを考慮すると、医療機関も適正な料金設定をしていると思いますが、まだまだ気軽に受けられる金額ではない場合が多いです。
これに関しては、日本再生医療学会が主体となって、自由診療であれ、適正な料金で提供されているか、そもそも適正な料金というのはいくらなのか、培養に関する原価などを下げる工夫ができないかなど、さまざまな取り組みを行なっています。
また、どこの医療機関でも受けることができないことも、お住まいの地域などによっては、デメリットになる場合もあるかと思います。
再生医療の提供を始めるにあたっては、厳格な審査をクリアする必要があります。また、提供開始後も、定期報告など細かく管理されていますので、捉えかたによっては、安心して受診できる基準の一つになるかと思います。
地域によっては、再生医療を提供している医療機関が近くになく、通うのに苦労するなどもあると思いますが、今後も再生医療を提供する医療機関は増えていく見込みであるとともに、再生医療サーチでお近くの医療機関が見つかると幸いです。
また、日本再生医療学会が認定医制度というものを設けており、試験に合格した医師を認定医と定めており、再生医療サーチの中にも、認定医の表示がありますので、ぜひ探してみてください。
人生100年時代のQOLを高めるなど、多くの期待をされている再生医療ですが、まだ課題もあります。しかし、皆さんの健康のためにも、再生医療サーチは、再生医療を正しく広め、課題の解決にも貢献していけたらと思っております。