再生医療を国民に届ける試み
更新日：2024年8月24日
再生医療は「夢の治療」として多くの国民に期待されています。今まで治療が困難であった病気が治せるようになることや、既存の治療に加えて再生医療が選択肢として増えることは、非常に画期的です。
しかし、一方で再生医療にはまだ分からないことが多く、提供する医療機関には慎重な対応が求められます。「再生医療」を提供するクリニックが増えている中で、多くの情報が氾濫している現状です。再生医療を受ける際には、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか？
届け出された治療か確認する
健康保険が使える再生医療等製品は、安全性と一定の効果が期待されているため、比較的安全とされています。現段階では、白血病などの血液疾患、皮膚や関節の病気、角膜の病気などで健康保険が適用される再生医療が存在し、今後も増えることが期待されています。
しかし、日本の再生医療は早期承認制度という国際的にも珍しい制度のもとで承認されているため、場合によっては承認が取り消されることもあります。
健康保険がまだ使えない再生医療には、いずれ保険が適用されることを前提とした先進医療と、自由診療があります。先進医療の費用は全額自己負担ですが、入院費用などの一部の医療費については健康保険が適用されます。先進医療における再生医療は、まだ研究段階のものが多く、その効果やリスクについては不確定な部分があります。医師から十分な説明を受け、治療のメリットとデメリットを理解した上で決断することが重要です。
自由診療ではすべての費用が自己負担です。治療は再生医療等安全性確保法に基づき、厚生労働省への届け出が義務付けられていますが、あくまでも届け出であって、認可されるわけではないことを理解しておく必要があります。認定再生医療等委員会による審査があり、再生医療として提供することが適切と判断された場合に厚生労働省に届出がなされます。
また、Aという治療に使う前提で届け出られた細胞治療を、別のBという治療に使うことは許されません。同じ細胞であっても、治療ごとに届け出が必要ですので、この点も確認が必要です。
自分に適しているか確認する
再生医療はすべての病気や症状に効果があるわけではありません。同じ病気でも進行具合によっては再生医療の対象とならない場合があります。効果が期待できないのに、まず再生医療を試すことはお勧めできません。自分の症状に対して、その治療が適しているか、効果が期待できるかを医師と相談することが重要です。
また、可能であれば提案されている治療の科学的根拠や過去の成功例についても情報を収集することが有用です。しかし、一般の方にとって正しい情報にたどり着くのは容易ではありません。
正しい情報の価値
再生医療による治療の内容、効果、リスクについて十分な説明を受け、理解した上で同意することが重要です。疑問点や不安な点があれば、積極的に質問し、理解を深めましょう。また、自分の病気に対してのすべての選択肢について説明を受ける必要があります。「何もしない」という選択肢も含め、病気の自然経過についても説明を受けましょう。
多くの場合、治療についての説明は受診した医療施設で行われます。医療従事者も人間ですので、自分たちが提供する医療を勧める傾向があります。私もそうですが、最も自信のある治療を勧めるのは自然な流れとも言えます。
治療について最善の選択をするためには、正しい情報が不可欠です。残念ながらネット検索で得られる情報は玉石混交と言わざるを得ません。検索キーワードによって表示されるサイトはブラックボックスになっているため、上位に表示された情報が正しいとは限りません。少しでも疑問が残る場合は、セカンドオピニオン外来や相談外来を受診するのも一つの方法です。これらの外来は自費ですが、相談する時間を十分に確保できる仕組みになっています。
当院の試み
藤田医科大学羽田クリニックは再生医療を提供する拠点として昨年10月に開業しました。現在は間葉系幹細胞を用いた膝関節治療、不妊治療を展開しており、いずれはiPS細胞由来の細胞を用いた再生医療を提供する予定です。
また、Reverse translational researchによって再生医療で提供する細胞のQuality controlや特性解析を実施しています。安全性、及び有効性を検証しながら最先端の再生医療を提供するHubを目指しております。再生医療に関する正しい情報を発信しながら、日本の再生医療を盛り上げたいと思います。一般向けに相談外来（自費）を実施していますので、お問い合わせいただければ幸いです。
再生医療は、未来の医療の可能性を大きく広げるものです。私たちがその恩恵を最大限に享受するためには、医療従事者と患者の皆さまが協力し合い、共に歩むことが重要です。再生医療の発展には、皆さまのご理解とご協力が欠かせません。ともに未来の健康を築き上げていきましょう。