• 再生医療とプラナリア

    投稿日:2023年9月11日
    更新日:2023年9月16日
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    プラナリアとは?

    プラナリアとは、川などに生息する1~3cmほどの、平べったい生物です。日本にも生息しており、川などの水辺の石や枯葉などの裏に張り付いています。ナミウズムシのことをプラナリアという場合が多いです。

    なぜプラナリアの話?と思いになった方もいらっしゃると思いますが、実は再生医療において、プラナリアの研究は非常に有意義なのです。

    このプラナリアという生物は、ある一定の大きさになると、自身の体を切って生殖を行ないます。大した機能を持ってない生物なのでは?と思うでしょうが、プラナリアは様々な器官を有した生物です。切り離された片方にも、しっかり器官ができあがります。

    例えば、身体の半分から切断すると、当然、頭がある部分と、しっぽがある部分に分かれます。ところが、数日すると、頭しかなかった部分にしっぽが生え、しっぽしかなかった部分には脳や目ができ、頭の部分ができます。つまり、再生するのです。

    これは、半分でなくとも、例えば3つに切断すれば、3匹のプラナリアになります。とある学者が、1匹のプラナリアをみじん切りのように切り刻んだところ、そのすべてが再生し、100匹を超えるプラナリアになったそうです。

    また、頭部を切断され、しっぽだけになった個体が再生した際に、切断される前の記憶が残っている可能性も示唆されています。つまりクローンのようなものです。

    ものすごい生命力の持ち主のプラナリアですが、さすがに、不老不死ではく、例えば、目の部分の前で切断されると、再生することができなかったり、切断というより潰すことなどでも死滅します。水草などについていることがあり、熱帯魚など観賞魚の飼育などアクアリウムを作っている方々からは、この生命力の強さもあって、害虫扱いされています。

    プラナリアの持つ幹細胞

    プラナリアになぜこのような再生能力があるのかというと、全能性を持つ未分化の幹細胞を全身に備え持っているからです。そして、切り離された際に、どの部位、組織が欠損しているかが把握できるのです。

    例えば、頭から1番~10番と10等分に番号を付けるとします。そして、1番~3番までの部分で切断すると、4番~10番が欠損していることを理解し、その部分を再生させます。1番~2番と6番~10番を切り離して3番~5番の部分のみにすると、1番~2番と6番~10番が欠損していることを理解して、その部分を再生させます。まさに全能の再生能力です。

    マンガやアニメで、腕がなくなったと思ったら、即座に腕が生えてくるシーンを見かけますが、まさしくそのような再生機能です。

    この再生能力が注目され、失われた器官や、機能不全に陥った組織を回復させることに活用できないか注目されているのです。

    現在の再生医療で用いられている幹細胞は、体性幹細胞の一種である間葉系幹細胞が用いられています。体性幹細胞とは、体内に存在しており、限られた複数の細胞に分化することができます。例えば、間葉系幹細胞は、心筋細胞、血管、骨や軟骨などに分化することができます。患者さんの脂肪組織などから、比較的容易に採取することができることから、骨のすり減りなどが原因で起こる変形性膝関節症の治療などに用いられています。

    この体性幹細胞は、多分化能幹細胞の一種で、もうひとつ多能性幹細胞というものがあります。

    iPS細胞とES細胞

    多能性幹細胞としては、ES細胞というものがあります。これは、受精卵の中にできる胚から細胞を取り出したものになります。受精卵は、小さな小さな状態から分化を繰り返しながら、10ヶ月程度で赤ちゃんにまで成長します。50cmほどの大きさですが、脳もあれば、心臓も、その他の組織も概ね出来上がっています。これは、受精卵の持つ多能性によるものです。しかしながら、このES細胞には、受精卵を破壊しなければならないという倫理的問題があります。

    もうひとつ有名なのは、ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授が作製に成功した、iPS細胞があります。患者さんから採取した細胞に、特定の因子を添加することで、あらゆる生体組織になる万能な幹細胞です。これならば、ES細胞のような倫理的問題もなく、体性幹細胞では困難だった治療にも用いることができると期待されています。

    再生医療等安全性確保法では第一種に分類される治療であり、今後様々な研究や治験が行われることで、プラナリアのようにみじん切りにされても100体に再生するほどではなくとも、ある程度の時間をかければ、マンガやアニメのように、腕が生えてくる日が来るかもしれません。

    体性幹細胞の一種であるご自身の脂肪組織から得られる幹細胞を用いた、変形性膝関節症を提供している医療機関は、再生医療サーチで検索できますので、膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ近隣の医療機関を検索してみてください。