• PRP治療(多血漿板血漿治療)の基礎研究・治療効果

    投稿日:2022年5月28日
    更新日:2024年9月3日
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    実験室での研究では、PRPにより組織修復のための細胞の活動が活発になることが確認されております。組織修復の命令・指令を伝えるサイトカインやケモカインと呼ばれる分子は、血小板から放出されますので、PRP中の血小板の量、すなわち濃度は、PRP治療の効果に影響を与えます。

    血小板濃度と産生する蛋白質の量

    血小板の濃度が高ければ高いほど、治療効果は上がると考えがちですが、実際はそうではありません。
    人工的に細胞を培養し、そこにPRPを加え、細胞が産生する組織修復に必要な蛋白質の量を測定したところ、血小板濃度が100万/μLまでの範囲内では、血小板濃度が高くなれば、細胞が産生する蛋白質の量も比例して増加しました。しかし、血小板濃度が100万/μLを越えた場合には、細胞が産生する蛋白質の量は、むしろ減少したとの報告があります。

    また、動物実験で、ラットの膝関節の腱に人工的に腱付着部症をおこし、そこに様々な濃度の血小板を含むPRPを注射したところ、血小板濃度が70-80万/μLのPRPの治療効果が一番高く、血小板濃度が50万/μLや100万/μLのPRPは、これと比較して治療効果が低かったとの報告もあります。

    PRP治療で治療効果が最大になる血小板の最適濃度があることが示唆されています

    これらの実験結果が、そのまま人間にあてはまるとは限りませんが、腱付着部症に対するPRP治療では、治療効果が最大になる血小板の最適濃度があることが示唆されます。

    血小板の濃度が極端に低い、または高いPRPには、腱付着部症に対する治療効果は見込めませんので、治療される場合には、注意が必要です。血液検査用の機器を用いて血小板濃度を測定し、最適な濃度に調整したPRPを提供する施設もあります。

    変形性関節症では、注射されたPRPは関節液により薄まるため、血小板濃度は高めの方が良いですが、現時点では、その最適な濃度はわかっておらず、今後の研究が待たれます。

    PRPは赤血球を除いた血液を濃縮してつくられるため、白血球を含みます。
    白血球の一種である好中球は、炎症を惹起する作用があり、炎症部位に多くみられます。変形性関節症の治療など、炎症を抑えたい場合には、この好中球を除いたPRPを使用する方が、治療効果が得られやすいとの意見もあります。

    好中球を除去したPRPを作成するには、好中球を選択的に除去できる作成キットがありますので、これを使用すれば比較的容易に作成することができます。

    このコラムが、皆様の御理解や治療のお助けとなることをお祈り申し上げます。